BOSEは、ポータブル・ラインアレイ・システムL1 Proを発表した。日本で発売は2021年2月の予定。
オリジネーターがポータブル・ラインアレイ・システムをレベル・アップ
BOSEが最初のL1をリリースしたのが2003年。演奏者が自身のモニターや楽器アンプとして使うと同時に、PAシステムとして観客にサウンドを届けることで、見た目と発音点の不一致を解消するという、新しいコンセプトから生まれた製品だった。柱状の筐体に小型のユニットを並べたラインアレイ構造を採用し、水平カバレージ・エリアを拡大しつつ、遠達性も高めた。さらに、ハウリングにも強いというラインアレイのメリットもあった。
こうした先進のコンセプトは、欧米のようにバンドがPAシステムまで車載してツアーするスタイルが根付いたところでは、機材のコンパクト化が可能であると好評に。日本ではこのスタイルでの使用こそ少ないものの、優れた性能からメインPAからステージ・モニターとして使用されるケースも多かった。さらに、スタンド・マウント・スピーカーよりもすっきりとした印象となることで、設備向けとしても人気を博してきた。
その後、L1 CompactやL1 Model IS(日本未発売)、L1 Model II(同)とシリーズが続いてきたが、他社からもこうしたスタイルの製品が近年登場。 BOSEはオリジネイターとしてこのポータブル・ラインアレイ・システムというカテゴリーをレベル・アップする製品として、L1 Proシリーズを発売するという。
L1 Pro8
L1 Compactに代わるモデルとして登場するのが、L1 Pro8(148,000円+税)。8基の2インチ・ネオジム・ドライバーを搭載したC字型アーティキュレテッド・ラインアレイを備えており、180°の水平カバレージとワイドな垂直放射を備える。下部には7インチ×13インチの“ハイエクスカーション・レース・トラック型”と呼ばれるオーバル形状のドライバーを実装したサブウーファーを用意。12インチ・ウーファーに匹敵する再生能力を得ながら、スリムなデザインを可能にし、上部ハンドルを持った際に身体に近い位置に重心が来るため、持ち運びしやすいのも特徴だ。重量は17.65kg。
最大音圧は118dB SPL(ピーク)と、L1 Compactに比べて6dBもアップ。低域周波数特性も、L1 Compactの65Hzから45Hzまで拡張されている。
本体には3chミキサーを装備。ch1&2はファンタム電源対応マイクプリを備えたXLR/TRSフォーン・コンボ入力を搭載。ボーカルやアコギなど入力ソースに応じた設定をスイッチひとつで得られるToneMatch EQも装備しる。ch3はステレオ・ミニ、フォーン、Bluetoothオーディオに対応。各チャンネルにはLEDインジケーター付きのロータリー・エンコーダーを1基ずつ備え、ボリューム、ベース、トレブル、リバーブ(センド)の設定が行える。また、デジタル・ミキサーT4SやT8Sとケーブル1本で接続でき、電源供給も可能なToneMatchポート、ライン出力端子も用意している。
L1 Pro16
2インチ・ユニットを16基備えながら、L1 Pro8とほぼ同じ高さに抑えたL1 Pro16(200,000円+税)は、下方に向けた垂直カバレージを持つモデル。最大音圧は124dB SPL(ピーク)となる。サブウーファーは10インチ×18インチで、従来の15インチ・ドライバーに匹敵。ミキサー部の構成はL1 Pro8と同様になっている。重量は24.35kg。
L1 Pro32+Sub 1/Sub 2
32基の2インチ・ドライバーを搭載したシリーズ最高性能を持つモデル。最大音圧は128dB SPL(ピーク)で、水平方向に音を放つ直線型ラインアレイとなっている。7インチ×13インチ・ドライバーを備えるSub1、もしくは10インチ×18インチ・ドライバーのSub2、いずれかとのセットとなる。Sub1との組み合わせでは40Hzまで、Sub2とでは37Hzまでの低域を再生可能。ミキサー部はL1 Pro8、L1 Pro16と同じ基本構成で、Sub1/Sub2との専用接続端子SubMatchも用意する。L1 Pro32+Sub1は330,000円+税、L1 Pro32+Sub2は380,000円+税。
Sub1とSub2は単体でも発売され、L1 Pro32には最大2基が接続可能。2台のSub1またはSub2を組み合わせて使用する際、カーディオイド・モードで前方指向性を得ることができる。選択可能なクロスオーバーやライン入出力を備えているため、L1 Pro以外との組み合わせにも対応。例えば、側面のポール・マウントを使ってS1 Proとセットで使用することもできる。
L1 Mix
L1 Proのミキサーは、専用アプリL1 Mixを使ってBluetooth接続したスマートフォンやタブレット(iOS/Android)からコントロールが可能。本体側がロータリー・エンコーダーでの操作のため、相互連携した操作が行える。また、ToneMatch EQ用のカスタム・プリセットも用意。マイクの種類やエレキギターなどソースに応じた選択が可能となっている。
L1 Pro8実機
発表に先駆けて、BOSEがL1 Pro8のサンプル機をRittor Baseに持ち込んでくれた。
アレイ部分はエクステンションをつなげた状態で約2m。スタンディングでのイベントはこの形状の使用が良さそうだ。
一方、着席スタイルに合わせてエクステンションを外した状態での使用も可能となっている。
C字型アーティキュレイテッド・ラインアレイの構造は、グリルを光に透かすとよく見える。上下方向だけでなく、水平カバレージ・エリアを広げるためドライバーは左右にも角度をつけて搭載されているのが分かる。
実際に音を聴いてみると、カバレージ・エリアに入った瞬間にアタックがよく聴こえ、はっきりと明りょうな出音になるのが分かる。この明りょう度の高さは、近年のBOSEポータブルPA製品に共通した特徴と言えそうだ。
また、スペックに現れにくい部分では、マイク・プリアンプがクリアなことも実機に触れて分かったこと。ゲインを上げても、ドライバー・アレイの近くまで寄らないとフロア・ノイズが分からないほどだった。
ミキサー部は、プッシュ式のロータリー・エンコーダーを装備。ボリュームやリバーブでは絞りきった位置からの量で、ベース/トレブルは12時の位置からの量で表現されている。
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