“原音忠実”の理念のもと、ケーブルなどのオーディオ・アクセサリーを手掛けるACOUSTIC REVIVE。今回は、スピーカー・スタンドのクロス・レビューをお届けする。
ACOUSTIC REVIVE代表
石黒謙、氏の技術解説
スピーカー・スタンドの役目は、スピーカーをしっかりと支えスピーカー・ユニットのピストン・モーションを正確にすることと、スピーカーからの振動を素早く処理してほかの機材などに振動の影響を与えないようにすることです。スピーカー・スタンドの中には、スタンド自体が共振したりスタンドの素材の癖が強かったりして、スピーカーの再生音に激しい色付けをしたり、位相を乱してしまうものも多く存在します。
ACOUSTIC REVIVE製品は、振動処理に方向性を持たせた画期的な構造。スタンドの上から下にかけて、各素材を徐々に硬度が高くなるよう配置することでスピーカーの振動がスムーズに移動し、支柱内の特殊充填材により素早く熱エネルギーに変換され消滅するため、音色的な癖や周波数特性のばらつきのない正確な位相の再生音が実現します。
<製品ラインナップ>
●RSS-600:168,000円(2本1組)
天板:200(W)×260(D)mm、底板:260(W)×310(D)mm、高さ:600mm
●YSSシリーズ
▪︎YSS-110HQ:64,000円(2本1組)
高さ:1,100mm
▪︎YSS-90HQ:62,000円(2本1組/上の写真)
高さ:900mm
▪︎YSS-60HQ:54,000円(2本1組)
高さ:600mm
▪共通項目
天板:200(W)×220(D)mm、底板:240(W)×260(D)mm
※高さ、天板寸法、支柱本数などの特注可能(要見積もり)
Cross Review
森元浩二.
<Profile>prime sound studio formのチーフ・エンジニアとして活躍。浜崎あゆみ、三代目J Soul Brothers、甲斐バンド、AAA、E-girlsなどの作品に携わる
これまでの考えをあらためるほど
別次元の音のまとまり具合
ACOUSTIC REVIVEは、2001年にレコーディング・スタジオでの使用を前提としたスピーカー・スタンド、RSS-1053を発売しました。それは大型の3本脚のモデルで、RSS-600と同様に音質的優位性を考慮し、天板の素材にA2017S航空レベル・アルミ合金を採用した製品。高制震防振に重点が置かれ、付帯音の無いシャープな音像が得られる一方、低域に物足りなさを感じる傾向もあり、個人的には質実剛健な音質という印象でした。
今回試したRSS-600とYSS-90HQは、2世代目として発売されたものです。私のスタジオにも1世代目のスタンドがあり、よく知った製品なのですが、2世代目は今回初めて使いました。使用前は1世代目の音の流れを汲むのだろうと思っていましたが、聴いてみると全く違う音。超低域まで奇麗に伸び、中高域は金属製スタンドとは思えないほど柔らかい音がします。正直なところ、いすに座って使う1mほどの高さのスピーカー・スタンド設置による音は、あきらめなければならない部分が多々あると思っていましたが、ACOUSTIC REVIVEの最新スタンドを使ったことで、その考えが間違ったものだと思い知らされました。他社のスタンドとも比べたところ、やはりこれまでのものとは別次元の音のまとまりをしているのを確認できました。
RSS-600は最上位機なので、そちらが絶対に良いのですが、YSS-90HQもリーズナブルだから音に妥協しているわけでは決してなく、スタジオ使用としてはバランスの良い音がするスタンド。1世代目の愛用者には、ぜひ聴いてほしいです。聴いたら戻れなくなると思いますが(笑)。
土岐彩香
<Profile>青葉台スタジオで経験を積み、フリーに。Lucky Kilimanjaro、女王蜂、SANABAGUN.、Nulbarichなどの作品に携わる。ミニマル・テクノのDJとしても活動
輪郭がはっきりとし音像が見えやすい
あいまいだった鳴りが引き締まる
もともと自宅で使っていたスタンドにも満足していたのですが、エンジニアの先輩からACOUSTIC REVIVE製品を薦められることが多く、気になっていました。今回試したのはYSS-90HQ。まず好感を持ったのが音像の見えやすさの向上です。スピード感や定位による輪郭がはっきりして中高域が見えやすくなり、モニター音量の最後のワンノッチが必要ないかなという印象に。M/Sの広がり方もより感じ取りやすくなりました。またリミッターの具合がシビアに見えるようになったので、ダイナミクスの調整など、より丁寧な仕事ができそうです。
あいまいだった鳴りが締まるため、私の部屋では低域が少し物足りなくも感じましたが奥行きを損なうことのない印象なので、気にしていなかった部屋の特性の課題がはっきりしたということでしょう。自宅ではATC SCM12 Proを使っていますが、これを機にサブウーファーの導入を検討しました。このように全体のアップ・グレードに導いてくれるのも良い機材の条件のように思います。
小森雅仁
<Profile>Greenbird、birdie houseを経てフリーランスに。Official髭男dism、米津玄師、Yaffle、小袋成彬、iri、藤井風など多くのアーティストの作品を手掛けてきた
音のフォーカスが良くなり
低域がすっきり正しく再生される印象
以前から興味のあったACOUSTIC REVIVEのスピーカー・スタンド。今回はYSS-90HQを自宅の作業部屋に持ち込み、ほぼ同サイズの他社製スタンドと比べてみました。
一聴して感じたのは音のフォーカスの良さ。リバーブのテールや各トラックの定位の見えやすさが一段階、向上しました。また他社スタンドの場合、150〜200Hz辺りのピークが少し気になりスピーカーの内蔵EQで微調整していたのですが、YSS-90HQではEQの必要がありませんでした。その辺りの帯域がスッキリ正しく再生されることで低域(60Hzより下)の見通しも良くなりますし、正直これは導入するしか……という感じです。まさに“スピーカー・スタンドとして個性や癖の発生を持たず、スピーカーの持ち味を変えずに性能をフルに発揮させる”というコンセプト通りの製品だと思いました。
塗装などの仕上げにも非常に高級感があり、モチベーションが上がります。普段スタジオで使っているもっと大きなスピーカーのために、天板サイズの大きなものもぜひ試してみたいと思いました。
■ACOUSTIC REVIVE製品に関する問合せ:ACOUSTIC REVIVE